都会と海が見える静かな場所の二拠点生活を始めて一年近くたちました。海を前にした生活をしている時は自然と早く目が覚めます。まだ真っ暗な海にだんだんと太陽が昇り始めていく光景は「絵にも描けない美しさ…」とはよく言ったもの、本当にその通りで、ああ生きてて良かった…なんて大袈裟ではなく感じてしまうのです。夕陽の美しさは知っていても早朝に見せる太陽の美しさはこの生活をするまで知りませんでした。夕陽は胸を締め付けられる、胸が痛くなるほどの切なさと美しさがあり、黄昏のプロセスは溜息が出るほどです。それに比べると朝日というのは、生きるエネルギー、前向きというアグレッシブな力をこんなにも与えてくれる…強さと美しさとは朝日のようなものなのではないかと思うのです。自然の力強さに深く心動かされる、そんな朝日を眺めて過ごす早朝のひとときは、『早起きは三文の徳』この言葉をあらためて噛み締めます。そんな朝日を眺めながら今朝はこの曲を聴いていました。『The Glory of Love 』。David Foster がPeter Cetera に提供した曲ですが、このRecordings というアルバム(ピアノを中心に展開するオーケストラヴァージョン)の中に入っていてそれが私は大好き、昔から聴き続けています。まだ薄暗い朝のひとときに似合う曲。この朝日の美しさと共にあなたに贈ります。素敵なひとときを…。
坪井きみ
切なさと美しさ、Pat Metheny Group の世界です
Pat Metheny のインタビュー記事を読んでいたら、彼にとっての思い出深いミュージシャンの中にDavid Bowie の存在が語られていました。Pat Metheny はとても好きなミュージシャンなのでほとんどのアルバムを聴いている…と思っていたのですがDavid Bowie と一緒に関わった作品があるとは恥ずかしながら知りませんでした。そんな事がきっかけで知ったアルバムは、映画The Falcon and the Snowman のサウンドトラック。その中の一曲『This is Not America 』をDavid Bowie が詩を書きヴォーカルを担当してPat Metheny とLyle Mays が作曲とプロデュースを担当したというアルバムです。David Bowie の様々なエピソードが語られていて、あらためてミュージシャンとしてトップを生きる二人が関わるサウンドの魅力に感動しました。そんな二人の音楽への拘りの中で出来上がった素敵な曲です。そして映画を観ていなくても彼が創り出すストーリーに吸い込まれていくような変わらぬ世界観。好きなPat Metheny アルバムが一枚増えました。今日お届けの曲はその中から『Daulton Lee 』。夕陽…夏でなく今の季節のように晩秋の太陽が沈む前のひととき…そんな時間が似合うような曲。静かにじっと眼を閉じて聴いていると美しい程に切ない思いが私の胸を霞めます。曲との出会いは素敵な人との出会いにも似ています。あなたにもそんな思いをお届けします。穏やかなひとときになりますように…。
月と一緒にに秋の夜のドライブ
11月も中旬に入りかけているにもかかわらず日中は暑いくらいです。来月は12月というのに今年の美しい秋はのらりくらりとなかなか立ち去ろうとせず小春日和が続いていますね。ちょっと気は早い…とは思うもののクリスマスリースやツリーを飾りました。せっかく素敵なクリスマスデコレーションですから少しでも長く楽しめたら、、なんて思いつつせっせと楽しみながらね。皆さんのお家では如何でしょうか。そんな感じでちょっと気分がリフレッシュできたところでふっと夜空を見ると月が綺麗です。最近バタバタとしていて大好きな車の運転を楽しんでいないなぁ…そうだ、、久しぶりに夜のドライブに出かけてみよう…!車の運転というのは、ハンドル操作やアクセルブレーキのコントロールに集中して、その中で窓の移り変わる風景、それが夜はまた昼間と違った世界観を味わう事ができて、私にとっては凄く好きな空間であり素敵なひとときです。という訳で、今夜一緒に過ごすドライブの一曲をあなたにも贈ります。前回も紹介したBlack & Brown のアルバムからの一曲。イタリアのIrma から登場したACID JAZZを中心に繰り広げるバンドです。ジャズ的コードの構成、funkyなgrooveはとにかく素晴らしく、イタリアのクラブシーンではとても人気のあるアーティストです。まさに夜のドライブには最高…。今回はその彼等のアルバムFile Under Funk から『Tribal Boogaloo 』。あなたにも綺麗な月と一緒に素敵な秋の夜のひとときが訪れますように。
都会の孤独
今日はクラブシーンでヒットしたアルバムのお届けです。都会は魅力的なファッションを生み出し素敵なレストランがあり、そしてなんと言ってもビジネスシーンにおいては経済的効果をあげるために最先端の技術や発想のプレゼンが飛び交う刺激に満ち溢れた最高の場所です。自然でありのままに生きていきたい…とは思いつつも人間として生まれてきた以上、嫌でも戦いの中に出ていかなければなりません。皆んなそれぞれ戦い、頑張って過ごす、悩みも抱えながら生きていく。その合間にあるちょっとした幸せを感じながら。。。都会には楽しい事が一杯ありますが、そこでずっと過ごしていると時々とてつもない孤独感に襲われます。少しずつ自分なりに修正しながらいつもの私を取り戻して強くいたいな…と思います。人に溢れていても何故か感じる孤独感…というのは都会で生きる人間の宿命かもしれません。そんな事を思いながら…イタリアのAndrea Raffini 、Picchio Bagnoli 2人のアーティストが中心のユニットBlack & Brown のアルバムCool Affair からの一曲『Cool Affair 』をあなたに贈ります。孤独を感じながら生きることは、私達人間が有頂天にならないように神様が時々与える戒めなのかもしれませんね。私利私欲に目が眩む事のないように。優しさのある人間でいたい…と思います。秋の綺麗な夜空に浮かぶ三日月みたいにね。
宇宙単位で考える日常…。
私は子供の頃から宇宙に対して物凄く関心があり、この広い宇宙には地球をはじめとする太陽系のような惑星が無数にあってその中には生命体は存在する…と思っています。まあ、その生命体が存在している時と私達人間が存在する時期が重なっている可能性はとても低いらしいのでこの広大な宇宙の中から物凄く小さな地球という星を目指してやってくる可能性はゼロに近い…。わかっていても、夜空を眺めてその先に私達地球人と同じ生命体が過ごしている、と考えるだけでも自然の力の偉大さに感動します。そして、日々の小さな悩みも長い長い宇宙の歴史の中ではほとんど一瞬にすぎないんだなあ、と考えたりします。秋から冬にかけての夜空はたとえ都会にいても自然の中なら尚更、とても澄んだ香りがして美しく大好きな背景の一つ。そんな事を思いながら、今日は私の古い愛聴盤のアルバムをお届けします。Miles Davis のアルバムNefertiti 。この中で3曲がWayne Shorter 作曲なのですが、このW.Shorter から生まれる世界観が凄く好きです。そして彼の強い個性のサックスがドキドキするくらい好き。その中から今回は『Fall 』をあなたに。Miles とWayneの語り合うようなでも刺激し合い高揚していくソロ 、Herbie Hancock の流れるような、でも緊張感ある固めな音色とリリカルなソロピアノ、Ron Carter とTony Williams の創り出すタイトなリズム、素晴らしい作品です。じっと聴きいっていると…Wayne Shorter はMiles と今頃宇宙を航海してるのだろうか…と思ったりします。素敵な秋の夜長になりますように。
Baritone guitar の響きと共に…。
11月になりました。早いものです。今年もあと2ヶ月。バタバタと日常に追われて気がついたら時がこんなに過ぎていた…なんていうのが現代に生きる私達です。自分を見失いそうになってイライラしたり焦ったり、そんな日々が続くと自分でも凄く嫌な人間になっていることにふと気づきます。そんな時、ふらりと旅に出かけたくなるのですが、なかなかそうはいかないのが現実。とりあえずなんとか穏やかな心を取り戻そうと思いつつ沢木耕太郎さんの旅の本を読んだりヘミングウェイの世界に入り込んだりするのがいつもの私です。こうして、自分の機嫌を自分でとりながら過ごしていく…という事は大切な行動の一つなのかもしれませんね。特に誰かの迷惑になるわけでもなく、自分だけのちょっとした逃げ道を作っておくというのは健康な心を取り戻すとても便利な解決法の一つです。そして、そんな時にそっと寄り添ってくれる最高の音楽があったら尚幸せ一杯な気分。今日はそんなあなたにお届けしたいアルバムです。Kurt Rosenwinkel のソロアルバムBerlin Baritone 。このアルバムは全てギターソロで構成されているのですが、とにかく『響』が美しく素晴らしい作品。バリトンギターで繰り広げられる彼のギターの世界観は繊細な旋律と彼ならではのコードの響きと相まって異空間に連れ出してくれます。その中から『Under it All 』。静かに目を閉じて聴いていると旅に出てひとりで綺麗な月の下に佇んでいるよう。さあ、今月も素敵な月になりますように。風邪に気をつけて…。
孤独と虚しさは違う…。『百年の孤独』を読み終えて。
ガルシア=マルケスの百年の孤独を読み終わりました。話題の本であったので読みかけの本と並行して読んでいこうと思っていたのですが、思わず引き込まれてしまい読みかけの方は中断して彼の描き出すマコンドの世界に入り込みました。人は優しさや美しさもあれば、欲望から生まれる汚さ、裏切り、快楽を得ても残る孤独感、、そしてずっとは続かない現実、諸行無常。そんな思いをガルシア=マルケスによって現実と非現実の間を行き来しながら描かれていく世界は思わず引き込まれてしまいます。私達人間は一体何を求めて、何処に向かっているのか…、もちろん人の数だけそれはあり、人それぞれなのですが、最後は自分ひとりであり孤独という世界観と共存しながら生きていかなければならないのも私達人間に与えられた宿命なのかな…と。でもやっぱり私達人間は人を愛し、時には傷つき、、激しい孤独に落ち入り…、でもまた誰かを愛してしまう。でもこんな事がある意味幸せなのかも。無限でなく有限な人生の中でそんな事を繰り返しながら時は過ぎていく。もちろん、彼の表現にはラテンアメリカで起きた事の歴史的背景もあり、そんな中で孤独感という想いが生まれてきているのでしょうが、実は今の時代においても違う意味での孤独感を感じながら日々私達は過ごしている、やはり『時代』というよりも人間という生き物の性質なのかもしれません。そんな人間の本質や人生感、それを彼の独特な世界観から生み出されるこの小説は人間臭さと愛情を感じるARTの世界観でいうならばシュルレアリスム的な作品です。のめり込んでしまいました。そんなところでほっと一息、言わずと知れたR&B の名曲『Just the two of us 』を聴きながらのひとときです。Grover Washington Jr.が1980年にリリースしたアルバムからの一曲。読書の後いろんな事を考えながら聴いているとBill Withers の歌声とGrover Washington Jr.のサックスが優しく包み込んでくれます。そんな思いをあなたにも…。
すっかり秋。澄んだジャズが似合う。
今年の秋冬の到来は遅い、とも言われていましたが10月も後半に迫った現在、肌寒さを感じる風が吹き始めました。ちょっと油断すると風邪をひきそうな季節ですね。出かける時は上着を羽織って行く時期、秋の装いを楽しむのも嬉しい…。夏に吹く風とはまた違って秋の風は寂しさも感じるけれど澄んだ香りもします。そんな事を思いながら、今日お届けの曲はピアノ&ギターのDUO 、Geri Allen とKurt Rosenwinkel のアルバムの中からの一曲です。ピアニストのGeri Allen は、2017年に亡くなったアメリカの偉大なるピアニストで、60歳という若さで大活躍中だったにも関わらず癌で呆気ない程あっという間に亡くなりました。その彼女とKurt Rosenwinkel が10年程前に共演したライブ音源がリリースされた作品です。繊細なタッチで溜息が出る程に美しく息の合ったギターとピアノが絡み合っています。そのアルバムの中からThelonious Monk の『RUBY MY DEAR 』。美しさと同時に緊迫した音の会話はまさに秋の孤独感と美が似合う…そんな感じです。激しく破壊的な演奏を聴かせてくれるKurt のギターも最高ですがこんなふうに対話をするような優しさを感じるギターも素敵。Geri のピアノはとにかくかっこいい。音楽においてとても厳しい方だったという事ですが、こんな繊細な音色を奏でるピアニスト、きっと優しさと強さが共存する方だったのかな…と思ったりします。さあ、今宵は秋の風に吹かれながら最高のJazz Duo に酔いしれてみてくださいね。風邪をひかないように暖かくしてね…。
物語を紡いでいくピアノの響き
今日はAaron Goldberg ピアノトリオのアルバムの中からのお届けです。アメリカで現代を代表するジャズピアニストとして素晴らしい演奏活動を繰り広げているミュージシャンですが、なかなか日本でのライブはなく、ニューヨーク辺りに旅行に行く事があったらまず彼のライブに行きたい、、是非彼の生でのピアノを聴きたい、と思っています。とはいえ、こうしてインターネットの普及のおかげでライブ映像も観て楽しむ事ができるのはあらためて凄いことだなぁと思いますね。彼のピアノは、マッコイタイナーを思わせる芯の強さと美しさを備えたピアノの響きそしてアプローチで、コンテンポラリーでありながらモダン、テクニカルな面の素晴らしさは当然の事、アルバムは楽曲の流れと共に物語を紡いでいくようなストーリーを感じます。今回お届けの曲は、アルバムAt the Edge of the World から『Luaty 』。Aaron のオリジナル曲です。このアルバムでのメンバーは、Matt Penman (b )、Leon Parker (ds )。彼の中では一番新しいアルバムですが、今までのアルバムとはまた違う感動を与えてくれます。秋の夜長、読書を楽しむ感覚でAaron のアルバムのストーリーを追いかけるように聴きいるのも素敵なひとときです。穏やかな夜をあなたに…。
月の儚げな美しさ…。
月が綺麗な季節です。切ない程に静かに輝く月を眺めていると優しい気持ちになってくるような気がします。いろんな別れがあり、いろんな出逢いがありそんなことの繰り返しで時が過ぎていく…。でも、そんなことお構いなしに自然は流れていき月は毎日違う表情を見せ、海は深い底に誰も知らない道を造り続ける…。その中で私達人間は自分だけのドラマがあり、過ぎていきます。今日はこの曲が聴きたくなりました。『En La Orilla Del Mundo 』英語で(At The Edge of the World )と言います。様々なヴァージョンがありますが、今回はべーシストのCharlie Haden リーダーのアルバム Nocturne からのお届けです。このアルバムはキューバ、メキシコのスタンダードナンバーを中心とした作品で、ピアニストはGonzalo Rubalcaba 、哀愁漂うラテンアメリカを感じるスタイルは一音一音、『音』という世界に集中して聴いていると月の光に吸い込まれそうです。このアルバム…というより、Charlie Haden の『En La Orilla Del Mundo 』が凄く好き。月の孤独を感じ、それを美しさに変えてくれる…そんな感じがします。あなたにもこの世界観を届けられたら嬉しいな…。