カズオ・イシグロさんの書く世界が好きで数年前からよく読むようになりました。長編を読み出すとその期間はその世界に入ってしまい今の自分とのバランスがとれなくなる程取り憑かれてしまうストーリーもありますが彼の表現する描写、展開は私に心地良い刺激を与えてくれます。最近は長編を読む時間がなかなか取れない中、素敵な短編集に出会いました。『夜想曲集』という音楽をテーマにしたストーリーが綴られています。その中で、「ラジオからChet Baker の『I Fall in Love Too Easily 』が流れてきた…」というシーンがあり、私自身仕事でよく演奏している名曲ですが、久しぶりにChet Baker を聴きたくなりました。シナトラで有名な曲ですが、私はChet のこの気怠さと切なさが相まったトランペットと歌声が私の心を揺さぶり…苦しくなる儚さ、、とでもいうのか、そんな世界観がとても好き。今回は、1953年にリリースされたものと、1988年生前最後の作品をあなたに贈ります。最後のChet はホテルの2階から転落して亡くなり、体内からはヘロインとコカインが検出されました。享年58歳。彼の人生は悲しいものだったのか、或いは彼なりの様々な幸せに満ちたこともあったのか…。当時のジャズマン達の人生は本当に切ない。素敵な名曲、Chet Baker の作り上げる『I Fall in Love Too Easily 』の世界。そっと一人で静かな夜に聴いてみてください。穏やかなひとときになりますように…。